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杜氏の挨拶

杜氏写真

酒造りの歴史に心をこめて

松浦一酒造は、長きにわたり肥前杜氏に酒造りを委ねてきました。
肥前杜氏・中興の祖と仰ぐ名古屋徳市翁も、この蔵で腕をふるった名杜氏であり、この蔵のいたるところに先人たちの魂の跡を感じないではいられません。

さて、私たちを取り巻く厳しい環境は、日本酒のレベルを世界一の酒質にまで高めてくれようとしています。
各地の名酒蔵から純米酒の輸出が好調です。そういう酒は逆境が育んでくれたのかも知れません。
こうした背景を捉えて、この冬の酒造りは始まりました。
「昨年よりもおいしい酒を!」と、いつの年も思うのですが、今までの『軽く、香りがよくて、きれいなもの』に、今年は『なめらかさと味のふくらみ』を持たせるように麹の形を少し変えてみました。

この蔵で、特定名称の酒を造らせてもらうようになって4年目になります。
ここで日頃私が気に入っていることを三点、皆様にお話しいたします。

先ず、仕込み蔵の天井のことです。
酒造構本には水洗いができる構造となっていますが、水洗いできる蔵などほとんどありません。ススを払うか、拭き上げることで済ませています。
ところがこの蔵では毎年、造りの初めに実行しており、感激しています。

次は、蔵人が作業前に必ず手を殺菌して流水洗浄してくれることです。
若くして杜氏になった私は、先輩の蔵人がきちんと手を洗ってくれないことにどれだけ悩んできたかわかりません。

三点目は、麹室の乾燥度です。
宮城の浦霞の麹室は、いつ訪ねても乾湿の差が8℃ついていました。できた麹は溶岩のようにデコボコで、噛むとサクサク、すべての粒が中心までハゼ込んでいました。
ところがここの麹室は8~11℃は容易につくし、今年は13℃の乾湿の差をつけることができました。

仕込み蔵の天井を洗い、手を洗い、乾燥した麹ができれば私の思いは具現化する筈です。

今、アメリカでは山田錦を栽培して、大吟醸を造る気運が高まっているそうです。
「日本人は、こんなに良いものをなぜ放っておくのか?」と聞いて、刺激を受けています。

酒質競争の時代…、私たちにとって腕を振るう時が来たのですから頑張らねばなりません。
そして、その成果を皆様にお試しいただけるよう一所懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

肥前杜氏 井上満

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蔵の風景・入口

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